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ジャズピアニスト荻原健登のブログ

うたかた

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先日、久しぶりに会った人に、
「最近はどうですか?」
みたいなことを訊かれて、
「幸せです。こういう生活が死ぬまで続けばいいと思っています。」
と応えた。
その人は、
「そういう言葉を聴くのは久しぶりだね。」
と言って笑った。その人はうれしそうだった。
えっ?そうだったかな、と私はハッとしてちょっと恥ずかしく思った。そんなにいつも不幸自慢ばかりだったかな?でも確かにここ10年位、そんな風に言ったことはなかったかも知れない。

でも
「幸せです。」
と言える自分のことを誇りに思う。
それが仮に鴨長明の言う、
「よどみに浮ぶうたかた」
のひとつだとしても。
私が
「幸せです。」
と言うとき、それはまぎれもなく幸せで、
だから私は幸せなのだ。


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とまあ散文詩のようなものはさておき。

この前のゴールデン・ウィークは広島で過ごしたのだけれども、なぜかみなで潮干狩りに行った。
宮島は潮干狩りにも適してるらしく、最近のオギワラくんのジャポネスクの美意識からいっても宮島でいい絵を撮れればと思ったのだが、宮島へ抜ける道は渋滞でドン詰まり、行けたとしても人が多過ぎて足の踏み場もない様な状況だったそうな。
代わりに行ったのが太田川。
川で潮干狩りとは聞いたことがなかったけれど、ちょうどその日が大潮だったこともあり、かなり海の水が流れ込んでいて、太田川でもできるということで行ってみた。

あんまり地道ではないオギワラくんは太田川について、はまぐりはもちろん、あさりも採れないのがわかって完全にやる気をなくして、ちびちびとしじみを採ってはあっという間に飽きていたのだが、川べりに集った人々ののどかで平和な光景を見ながら思い出したのが、源実朝の、

世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱でかなしも


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なんか最近こういうことばっか考えてるなあ。

・・・。

ともかくそんなこんなでいま幸せなオギワラくん、潮干狩りの人々を見ながら、かつて実朝が海辺の光景を見ながら感じたような詠嘆にくれたわけですよ。
実朝も、世の中が常であって欲しい、と思ったけれどその背景には現実には世の中が常ならざる現実があったわけで、だからコレ、実朝の詠嘆であるとともに祈りでもあったワケで・・・、そこらへん、オギワラくんと同じような気持ちだったのかなあ、と思うワケで・・・。
何となくこの歌、凄いな、と思うのですが、文芸評論家の間でも実朝は別格なようだし、オギワラくんごときがあーだこーだ言ってもボロが出るだけなのでコレくらいにしときやす。

とにかくオギワラくんは今、うたかたの幸せを噛み締めています。
因みに採ったしじみは味噌汁の具になりました。

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by kento_ogiwara | 2008-05-19 20:49 | Comments(0)