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ジャズピアニスト荻原健登のブログ

ヒーローと隠者

ジミ・ヘンドリクスは世界の全ての人々の孤独をいやしたけれど
彼がそのことによって孤独をいやされることはなかった

ジミ・ヘンドリクスは世界の全ての人々を幸せにしたけれど
彼がそのことによって幸せだったこともなかった

語る者と語られる者

隠者がヒーローになることはない
ヒーローになったら隠者ではなくなるからだ
だから隠者のヒーローはいない
ただ隠者は隠者だ

語られる隠者にとって語られることは何の意味もなさない
かりに一生の大半を隠者として語られずに生き
万が一語られたとしてもそれはほんの一瞬で
だからその語られた一瞬は隠者にとっては存在しない

では隠者が語ればヒーローになるのか
あるいはそうなのかも知れないが
ヒーローは元来隠者でなければならないので
そのヒーローは隠者ではなく
よってヒーローではない

隠者がヒーローになったとしても
隠者は隠者なので
隠者は自分がヒーローなのかなどはもちろんわからず
よって隠者にとって隠者は隠者なのだ

隠者をヒーローとして語る者の口の中でのみヒーローは存在し
すなわちヒーローはこの世には存在しない
隠者が語られたからといってヒーローになるわけでもなく
語るものが隠者をヒーローだと語っても
隠者は隠者だ
隠者は自分が隠者であることから逃れられない
語ることが隠者を隠者でなくする力を持っていることなど
あるわけはない

ヒーローは元来隠者でなければならないので
ヒーローは隠者ではなく
よってヒーローはヒーローではない

ジミ・ヘンドリクスの父親のアルは日本のミュージシャンの来訪を快く招き入れた
その時アルの目にはなぜかうっすらと涙が浮かんでいて、アルは笑って、言った
ジミは淋しかったんだと思う、と
アルのもとを去ったその日本のミュージシャンは
アルの目に浮かんだ涙の意味を考えていた
by kento_ogiwara | 2008-02-04 23:08 | Comments(0)